絵本教室で、ファンタジー作品を好んで書かれる方が大勢います。

子どもの作品=ファンタジーと思っているところもあるのでしょうね。

ファンタジーを表現できるのは、児童書や絵本の良さでもありますが、

世界観を「なんでもあり」にしてしまっていて、

何を表現したいのか、全く内容がみえてこない作品になっていることもあります。

 

ファンタジーを書くためには、「リアリティが重要」であることを

伝えるためには、どうしたらいいのか…。

 

思い悩むときには、『児童文学の方法 虚構の真実』川村たかし・著 を開いて読み返します。

学生時代に児童文学を書くための参考テキストとして使っていた本です。

第2章の空想物語の書き方に、著者自身の作品『星の小ぼとけさま』をとりあげながら、

ファンタジーの書き方を紹介しています。

以下、『児童文学の方法 虚構の真実』から一部紹介

 

ぼくの町に金剛寺という古刹があって、星祭りというのを行事にしている。全国各地たいていは、まんだらをまつるのだが、この寺に九体の小仏が実在した。長さは十五センチぐらいで力士が三体、博士が三体、学士が三体。彩色された人物像が個性的である。
祭りの前夜、長持ちからぬけ出した五人の仏さまが川を越えて、冒険に出かけるというふうに、物語を設定した。脱出のきっかけは寺のシャム猫が楽士の笛を盗み、楽士の打つ鼓の音からふしぎな夜が始まっていく。(132ページ)

 

ファンタジーには、細心の注意が必要で、ふしぎな展開が夢であったとして終わるのは味気ない。

夢を意識したとき作者は、大人の感覚にたちもどっているからだ。

子どもの心理と大人の感覚の混同は、作品をシラケさせはしても、深めはしない。

 

とも書かれている。

 

川村先生は、代表作『新十津川物語』のような、リアリズム児童文学が得意で、

ファンタジー作品の印象は、あまりない。

『星の小ぼとけさま』は、短編のファンタジー童話で、作品群のなかでも、少し、めずらしい作品です。

 

金剛寺の星祭りは、毎年2月3日に行われ

星供養曼荼羅画像と九曜星本尊佛が公開され、護摩供養が行われます。

九曜星本尊佛が、小ぼとけさまのモデルです。

実際にいる仏像を主人公にしてしまう、リアリティさ。仏像が冒険にでるありえなさ。

リアルとウソがまじりあう微妙なさじ加減。

「どこまで本当か、どこまでウソなのかわからない」ところが

ファンタジーのおもしろさだと思うのです。

 

最後に、「夢でした」だと、読者は「あ〜、うそなのか、がっかり」で終わります。

 

 

 

偶然にも、先生のお葬式が行われた日が2月3日。

星祭りの日。先生は、小ぼとけさまと一緒に天国にいったんかな〜。

 

残念ながら、『星の小ぼとけさま』は絶版中。

ご家族も強く復刊を望んでいらっしゃるのですが、絵の著作権の関係もあり、

なかなか、うまくはいかないものです。

復刊ドットコムで希望を募っていますが、なかなか増えないリクエスト数。

 

ふと、思い立って『星の小ぼとけさま』を検索してみました。

すると、えほんやるすばんばんするかいしゃ で、販売しているのを発見。

「えええ〜、本当に。うそじゃないよね〜」と半信半疑。

いつもなら、ツイッターで「発見!」とみんなにツイートするところを、ぐっとおさえて、

他の人に買われないうちに、購入ボタンをクリック!

『星の小ぼとけさま』川村たかし・作 丸木俊・絵

きれいに、カバーのかかった本が、とどきました。ありがとうございます。

しかも、初版本。

丸木 俊の絵が、いいのです。

カラーページも、ふんだんにあり、

昨今のモノクロ中心の童話作品よりも、印刷にお金がかかっているのは、わかります。

 

版元さま、ぜひ、復刊を。

あ、無理なら、別の版元になってもよいと思います。

丸木 俊さまの著作権管理をされているご家族の方、復刊いかがでしょうか?

 

ちなみに、『児童文学の方法 虚構の真実』も絶版中。

買う人が少ないし、しかたないのかな…。

児童文学を書きたい人のための、参考テキストとしては、わかりやすい本なんですけどね。

 

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