第6回あたらしい創作絵本大賞の応募ありがとうございます。

応募作品の下読みを行いました。

作品数が多かったので、最終審査用に54作品に絞り込みました。

 

○今年の作品傾向

今回は、文章と絵の担当をわけて創作している作品が増えています。

絵と文章(物語)、両方の品質(?)を揃えるとなると、担当分けして行うというのも

よい方法だと思います。

ただ、担当分けをしてしまったために、物語の内容を絵でうまく伝えられていなかったり、

絵で判断できる部分は文章を削除できるのに、それができていない作品もありました。

出版する時は、編集者が間に入り、調整をするのですが、

コンテスト応募作品は、間に入る人がいないぶん、お互いに最後まで

作品の方向性について話し会う必要があります。

 

○キャラクター

今年は、「カエル」「オオカミ」が人気で、複数の応募作品にでてきました。

昨年は、怖いもの(おばけや鬼)だったので、なぜ、設定が

重なってしまうのか不思議です。

「オオカミ」は、定番キャラなので、使うには何か工夫が必要。

 

○テーマなど

テーマでは、出産をあつかう作品が多かったです。

すでに、出産をテーマにした絵本は多くあり、

同じ物語展開だと比べられます。

同じテーマ作品で書くときは、

より、個性的な作品(さらに一段高い作品)が求められます。

 

また、単純なことばの繰り返しやことば遊び、図鑑、赤ちゃん絵本も多かった。

それなりにまとまった印象をうけるのですが、

よほどのユニークさ(個性)がないと、選に残りません。

物語創作の過程で苦しむストーリー絵本の方が、あらけずりでも

評価は高くなります。

 

ストーリー絵本では、全くのオリジナルというよりも

有名なメルヘンのパロディ、リスペクト作品も複数みられました。

すでに完成された作品を書きかえるという手法をとるので、

物語に破綻はないものの、

作者自身の伝えたいことがみえてこないのが難点。

 

不安な時代を反映しているのか、スピリチュアル系の絵本も複数ありました。

書いてはいけないわけではないけれど、子どもにわかるように書くには、

高度なテクニックが必要だと思いました。

 

モノトーンの彩色で応募している作品も複数。

応募告知期間が短かった影響で、彩色する時間がなかったのかしら?

最後にはカラフルな場面で終わるという、絵本らしい展開も考えて欲しかった。

全体的に、色のトーンが暗く、

楽しい作品のはずなのに、なぜか素直に喜べない・・・。

 

印象に残った作品

○まとまっている作品

「お菓子のお城」

「お貸しのお城」

「さくをのぼっちゃいけないよ」

「かぶとむしのはこびやさん」

「かわいいおうち」

「かくれもりのモンとノス どろんこオオカミ」

「しょんべんのとまらないブタ」

「あなからでたら」

 

○その他、気になる作品

「ちょうちょが はるを つれてきた」

「はなでかばあちゃん」

「ちゃっかりもの」

「ガチョウとアヒル どっちどっち」

「せかいのおわりとなつまっさかり」

「みんなで ほっきょくへいこう」

 

過去、入選している応募者の作品は、読んでいて安心するできばえ。

ただし、選考会では、「前作よりも面白くなっているか」という基準で

みられるので、初めての入選者よりも基準が厳しくなってしまいます。

名前をふせて選考していても、絵のタッチをみれば、誰が描いたのか

わかってしまうので、そいういう意味では、毎年、コンスタントに入選するのは

難しいことなのかもしれないです。

 

膨大な応募作品のなかで唯一

「さくをのぼっちゃいけないよ」だけが、

ことばと絵の相乗効果を利用したページをめくる「しかけ」を

考えていて、作者は、絵本を読む楽しさを知っていると感じました。

 

「お菓子のお城」と「お貸しのお城」は、連作になっています。

絵はユニークでよいのですが、背景に細かい書き込みが多いので

文章を入れたときに、読みづらくなりそう。

 

「ガチョウとアヒル どっちどっち」は、絵がすばらしくきれい。

絵本ならではの見せ場があれば、絵の良さが生きたように思う。

 

「ちょうちょが はるを つれてきた」は、

ページをめくるたびに、色彩にあふれた絵がでてきておもしろい。

 

「あなからでたら」は、最後の結末に、おどろき。

最後は、幸福感を感じるように色彩豊かに終わってもよかったな。

 

 

最終の審査になると、このブログに掲載されていない作品が

注目をあびることもあります。

なので、ここに掲載している作品だけが、最終審査にのこるのではありませんので

ご安心を。

 

最終審査は、3月に行います。

審査結果がわかりしだい、また、このブログでも発表します。

お楽しみに。

 

 

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